1854年にオランダ・アムステルダムにて創業したロイヤル・アッシャー。
「オランダ文化を辿る、ジュエリーの物語」では、アムステルダム在住のエディター&ライター、岩間まき氏とともに、オランダ文化やアムステルダムの街を辿りながら、ロイヤル・アッシャーのジュエリーが生まれるに至ったインスピレーションをご紹介。
第2回目はオランダのクリスマス文化である、「シンタクラース」について語ってもらいました。

オリボーレンの屋台
日が短くなり気温もぐっと下がり始める10月から、アムステルダムの街には、冬の風物詩・オリボーレン(オランダ風ドーナツ)の屋台が登場する。
サンタクロースの原型
シンタクラースの存在
オランダには、サンタクロースの原型と言われているシンタクラース(Sinterklaas)が存在する。
このシンタクラースは諸説あるようだが、4世紀にミュラ(現トルコ)の司教を務め、子供や商人、船舶の守護聖人として実在していた聖ニコラスがモデルであるというのが有力だ。
彼の命日、12月6日が「聖ニコラスの日」となり、オランダではその前夜に家族が集い祝っていたため、12月5日の夜を「シンタクラース・イブ(Sinterklaasavond)」と呼ぶようになった。
彼はいくつもの伝説を持つが、そのうちの一つに三人の少女を貧困から救うため窓から金貨を投げ入れたところ、彼女たちの靴の中に入り救われたというものがある。
その話が元で、子供たちが靴を用意しておくと、シンタクラースからプレゼントがもらえるようになっていった。
なおこの話を17世紀にアメリカに渡ったオランダ人が広めたことで、サンタクロースが生まれたと言われている。
オランダのテレビでは毎年11月半ばから12月5日まで、「シンタクラース・ジャーナル」という番組を毎日放映する。ここではシンタクラースや付き人ピートの日々の活動、オランダに到着する様子などが中継される。
小さな子供がいる家庭では、到着したその日から小さなプレゼントを贈り合うイベントが始まるのだ。

運河に現れたシンタクラース
彼はふだんスペインに住んでおり、蒸気船に乗ってアムステルダムにやってくる。子供たちはシンタクラースやピートの格好をして彼らを出迎える。

白馬に跨るシンタクラース
陸地ではシンタクラースは白馬に乗り、ピートたちは子供たちへお菓子やオレンジをばらまきながら、街を練り歩いていく光景が楽しめる。
オランダ流
プレゼントの贈り方
子供たちは夜になると、暖炉の近くや玄関の扉のそばに靴を置き、シンタクラースへの手紙や絵、シンタクラースが乗る白馬のための人参などを入れておく。そしてシンタクラースの歌(Sinterklaasliedjes)を歌うのである。
子供たちが眠りにつくと、ピートが家にやってきて靴の中の手紙や人参を貰い、その代わりにお菓子や小さなおもちゃなどを入れていく。子供が親の言うことを聞かなかった日は、靴の中に何も入っていないこともあるようだ。
このイベントを12月5日まで毎晩行う家庭もあれば、週末だけの家庭もある。
シンタクラースが大きなプレゼントを持って家にやってくるのは12月5日。
この日も、子供たちはいつものように靴を用意し、夜は家族みんなで集まってシンタクラースの歌を歌い、スタンポット(ジャガイモと野菜を茹でてマッシュしたもの)やチーズフォンデュといった暖かい食事、そしてオランダの冬の定番お菓子、ペパーノーテン(シナモンやクローブ、ジンジャーなどを使った少しスパイシーな丸い形状のクッキー)やスペキュラース(同様に様々なスパイスを使った、甘さのある薄く平らでサクサクとしたクッキー)などを楽しむのが一般的だ。
大抵の場合はその時に、外からドアをノックする音が聞こえ見にいってみると、プレゼントの入った麻製の袋が玄関に置いてあったり、あるいはシンタクラースが実際に来てプレゼントを子供たちに手渡す時もある。
ユーモアたっぷりの
大人へのプレゼント
さらにオランダには、大きくなった子供たちや大人たちにもサプライズ要素の詰まった伝統的なプレゼントの贈り方がある。それが詩(Gedicht)を添えたサプライズギフト(Lootjes trekken)だ。
事前にプレゼントを渡す人をくじ引きで決め、決められた予算内でプレゼントを選ぶのが一般的な風習だ。
そのプレゼントを手製のラッピングで包んでいくのだが、シンプルなものもあれば、段ボールや張子を使って相手の趣味に関連したものを模してギフトボックスを作ったり、わざと何重にも包装紙を巻いてみたり、ケーキを焼いてその中にプレゼントを入れたり、と工夫を凝らしたものまである。
また添える詩は、韻文で構成され、シンタクラースやピートからの視点で書かれる。
内容の一例としては、「シンタクラースやピートはあなたに何を贈ればよいかわからなかったので、あなたのことをよく考えた」というフレーズから始まり、その後プレゼントを受け取る人の性格や習慣、癖、一年に起きた出来事などが(大人へ送る場合はジョークも交えながら)記され、「だからこのプレゼントをあなたに贈ることに決めた」という文で締めくくられる。
詩を書くのが難しい人のために、最近では詩を生成してくれるウェブサイトもある。その詩はみんなの前で読み上げられ、そのあとプレゼント開封へと移る。
これらはクリエイティビティやユーモア力が必要で手間もかかるが、だからこそ贈る相手のことをより深く考える機会となり、開封するまでのプロセスには楽しみや笑いがもたらされ、和やかでリラックスした空間を生みだす。
まさにオランダの大切な文化のひとつなのである。
では12月25日の一般的なクリスマスをどのように過ごすのかと言えば、クリスマスツリーを飾り、家族全員でラム肉やポテトといったディナーを自宅で食べるか、もしくはドレスアップしてレストランへ出かけることが多い。
この日、同席している祖父母や親戚から子供たちにプレゼントを渡すこともあるようだが、基本的にオランダではプレゼントを贈り合うのはシンタクラースの日なのである。

聖ニコラス大聖堂
街の中心部、アムステルダムセントラル駅から徒歩数分のところにある聖ニコラス大聖堂は、シンタクラースの起源となった、聖ニコラスをまつる教会。
航海や漁業に携わる人々の守護聖人であるため、運河を臨む港湾近くに建てられているのも納得。オランダの建築家Adrianus Bleijsが手掛けており、ネオバロック様式とルネサンス様式が用いられている。
ホリデーシーズンにおすすめの
新作のギフトコレクション
ロイヤル・アッシャーの新作ジュエリーは、クリスマスや特別な日のプレゼント、自分へのご褒美におすすめ。
ギフトに最適なロイヤル・アッシャーのジュエリーを紹介したい。

ラインシリーズ ピアス・ブレスレット
直線や曲線を取り入れたシンプルなデザインと、最小限の爪でセットされた繊細なダイヤモンドの輝きが、顔まわりや腕元にモダンでエレガントな華やぎを添えてくれる。

ホリデーシーズンシリーズ ペンダント
2人の思い出や自身の成長が重なってできた「実り」をイメージしたデザイン。お守りのようにいつまでも身に着けられるペンダント。
今年のクリスマスは極上の輝きを放つロイヤル・アッシャーのジュエリーとともに、大切な人と上質なひとときを過ごしてみてはいかがだろうか。
岩間まき
東京都出身。学生時代からファッション誌に携わり、大学卒業後はインターナショナル・モード誌、ラグジュアリー・ファッション誌で編集を担当。独立後も編集、海外コレクション取材、ブランドやウェブサイトのディレクションやライティングなどを手掛けている。フランス、アメリカでの海外生活を経て、オランダ・アムステルダムに現住。趣味は読書と絵画鑑賞、旅行、カフェ巡り、そして体を動かすこと。