『ロイヤル・アッシャー、輝きの物語』では、創業170周年を迎える“ロイヤル・アッシャー”の魅力を業界の有識者、及びブランド関係者それぞれの視点、角度から語っていただくことで、170年の歴史を辿るとともに、新たなブランドの魅力をお伝えしてまいります。第6回は前編にて6代目としてマイク・アッシャー氏とともにブランドを舵取るリタ・アッシャー共同代表に「ロイヤル・アッシャー」とダイヤモンドジュエリーへの想いを語っていただきました。

人生の美しい瞬間を彩るダイヤモンド

「ロイヤル・アッシャー」の共同代表として北米ビジネスとジュエリー開発を統括するリタ・アッシャー氏。

―幼き日々にダイヤモンドに囲まれて育った環境はどのようなものでしたか? ご自身ではファミリービジネスを引き継ぐことを想像されていたのでしょうか。

学校が休みになるとオフィスに行って、ルーペの使い方などを教えてもらったり、美しいダイヤモンドを目にして慣れ親しんでいました。楽しい経験でしたが、当時はダイヤモンドがすぐ身近にあるとは意識していませんでした。

幼少期の夢は建築家や芸術家でしたし、大人になるにつれ、新しいアイデアを生み出し販売する起業家になることに憧れを抱くようになりました。それが、結果的に「ロイヤル・アッシャー」につながったのだと思います。

―キャリアのスタートに、国外の、そしてジュエリーとは異なるフィールドであるIT業界を選ばれた理由は? また、そこでの経験はどう生かされていますか。

在学中にデルコンピューターでインターンシップを経験し、やりがいのある仕事だったので海外営業アシスタントとして働き続けました。一緒に働く仲間が大好きでしたし、国際的なチームの一員になることで世界の企業がITレベルで何を必要としているかを理解しました。

数年間、営業職に就いたこと、国際的に働く難しさを体感したことは、ファミリービジネスに入るにあたって大きな利点になったと思います。また、外部からの新鮮なアイデアを持ち込むことになった点でも家族の助けになったのではないでしょうか。IT業界とダイヤモンドビジネスでは異なる面もあるのですべては当てはまりませんが、それまでの戦略を新たな視点で見ることができたのは間違いありません。

―そこから家業を継ぐ決意に至ったのには、何かきっかけがあったのですか?

ファミリービジネスに貢献したいとはずっと考えていましたが、まずはすべてを学んでから参画すべきだと思っていたんです。ですが、ある朝目覚めて、そんな日は来ないと悟りました。ファミリーのもとで働き、成功させることからすべてを学べばいいのだと考えを改めました。

あたたかな笑顔がファミリーの愛情と結束を物語る。左はエドワード・アッシャー名誉会長、右はマイク・アッシャー共同代表。

―「ロイヤル・アッシャー」のグローバル・マーケティングで重要視されていることは何でしょうか。かつての戦略から変化したことはありますか?

「ロイヤル・アッシャー」のマーケティングは「We Cut for Beauty」というコンセプトに重きを置いています。美しさの限界を超えたダイヤモンドカットに挑戦し続けること、それは一族のDNAです。真の美しさが引き出されるよう、常に一歩踏み込んで細部に至るまで特別なカットが施されています。

「ロイヤル・アッシャー」のダイヤモンドは天然であり、コンフリクトフリーであり、真なる遺産です。これらの要素はマーケティング活動においても強く打ち出していますが、以前にも増して今の「ロイヤル・アッシャー」の世界観を表すものとなっています。

―最高峰のダイヤモンドカッターとしてだけでなく、トップジュエラーとしての「ロイヤル・アッシャー」の存在感を高めていくために意識されていることは? アッシャーらしいスタイルとはどのようなものでしょうか。

ダイヤモンドのジュエリーやエンゲージリングを見るときに大切なのは、ダイヤモンドの美しさを中心にデザインされているかどうかです。わかりやすく説明するなら、まずはジュエリーを選んでからドレスを選ぶということ。完璧なダイヤモンドジュエリーやエンゲージリングに必要なのは、まずは最も美しいダイヤモンドで、そこからデザインを施していくのです。

革新的でありながらクラシック、そして時代を超越したデザイン。それが「ロイヤル・アッシャー」のダイヤモンドジュエリーです。

―「ロイヤル・アッシャー」では、ダイヤモンドビジネスの社会的・倫理的責任にも重きを置いていますよね。

ダイヤモンドの採掘から消費者の手にわたるまでのサプライチェーンは、収入が約束された正しい社会的・倫理的条件下で働く、仕事を愛する人々に支えられるべきだと信じています。それなくしてはダイヤモンドに価値はありませんし、あるべき環境下で採掘され、カット・研磨を経て生まれたピースこそが、自然を最も美しい形で表すダイヤモンドとしてすべての人に幸福をもたらすと考えています。

紛争ダイヤモンドが含まれないように、適切な状況下で採掘されたダイヤモンドであることを保証するために、私たちはこれからも努力を続けていかねばなりません。エシカルで透明性が高く、持続可能なジュエリー業界であること。それが私たちにとって何より重要な課題です。

―ロイヤル・アッシャー財団の設立は、その責任への表明とも言えますね。

はい、社会に貢献する必要性を強く信じ、私たちはロイヤル・アッシャー財団を設立しました。毎年、異なるプロジェクトに取り組むことをヴィジョンに掲げていますが、創業170周年を迎えるにあたりダイヤモンド産出国の女性と女児への支援に力を注ぐことを決めました。教育はあらゆる人にとり未来への鍵となります。特に、母国オランダのような教育環境が整っていない世界の地域で、私たちは支援をしていきたいと考えています。

2020年から共に「ロイヤル・アッシャー」を率いてきた弟のマイク氏と。親友であり、良き理解者であると話す。

―マイク・アッシャー氏と共同でファミリービジネスを続けていく強みをあげるとしたら何でしょうか?

マイクと私はいつも親友で、それが最大の強みです。彼はダイヤモンドのカットとデザインを専門にし、私はジュエリーデザインとマーケティングに集中していますが、それが素晴らしいクオリティをもたらしています。強力なチームであることが重要ですが、私たちは間違いなくそう。お互いの考えを理解するのに多くの言葉は必要ありません。

―創業170周年を迎え、次の時代へと歩を進めるにあたり改めて決意と想いを教えてください。

もしもあなたが6代目なら、重要なのはブランドをあと50年存続させることで、7代目が今の私たちと同じように誇りを抱くようにすることです。

私たちはより多くの、より美しいダイヤモンドピースを、より美しい人生の瞬間のために届けられるよう常に努めています。何世代にもわたり家族に愛され大切にされる、家宝となるジュエリーを生み出していきたいと願っています。

―リタさんは思い出深いダイヤモンドジュエリーを何かお持ちですか?

私が所有するジュエリーのなかで最も美しいもののひとつが、母のエンゲージリングです。光り輝く2カラットのDカラー、マーキースカットのダイヤモンドで、毎日ペンダントとして身に着けています。誰もが目を奪われるような美しさで、私自身にとっては毎日両親がすぐ側にいてくれるような、そんな気持ちにしてくれる大切なジュエリーです。

―最後に、リタさんにとってダイヤモンドとは?

生きること、美、自然、そして魔法。

PROFILE
Lita Asscher(リタ・アッシャー)
ロイヤル・アッシャー共同代表/ワールド・ダイヤモンド・カウンシル(WDC)アンバサダー/Diamonds Do Goodボードメンバー

6代目としてアッシャー家に生まれ育ち、IT業界で活躍した後に家業へ加わる。2020年に弟のマイクと共に共同代表に就任。故郷アムステルダムと十数年を過ごすニューヨークを行き来しながら、現在は北米のビジネス拡大と「ロイヤル・アッシャー」のジュエリー開発を統括する。またオランダ本国で募金活動を行う「ロイヤル・アッシャー財団」を設立。プライベートでは2人の娘を育てる母でもある。

Text: Aiko Ishii