『ロイヤル・アッシャー、輝きの物語』では、創業170周年を迎える“ロイヤル・アッシャー”の魅力を業界の有識者、及びブランド関係者それぞれの視点、角度から語っていただくことで、170年の歴史を辿るとともに、新たなブランドの魅力をお伝えしてまいります。最終回となる第6回後編は、リタ・アッシャー氏と足並みを揃え「ロイヤル・アッシャー」を率いるマイク・アッシャー共同代表に、長年ダイヤモンドに携わってきたその情熱と次世代に向けたビジョンをお話しいただきました。

ダイヤモンドに秘められた数多のストーリーとともに

「ロイヤル・アッシャー」の共同代表としてアジアと欧州の新規事業開発を統括するマイク・アッシャー氏。

―愛称は“ミスター・ダイヤモンド”と伺いました。いつからそう呼ばれるようになったのですか?

ミスター・ダイヤモンドか、ダイヤモンド・ガイ。この業界に足を踏み入れた若いころから、このニックネームで呼ばれています。最初は友人たちから始まって、徐々に業界の知人の間にも広まりました。私はダイヤモンドについてなら1日中でも語っていられるほどいつも情熱を注いでいるので大変気に入っています。あるイベントを訪れたときなど、面識のない警備員が私を見て「あなたがミスター・ダイヤモンドですよね、ようこそマイク・アッシャー」と声をかけてくれたほどです。

―ダイヤモンドの何に魅了されたのでしょうか?

ダイヤモンドの世界は、輝きだけではなくとても奥深いものです。ダイヤモンドジュエリーを手にすると感情に響くものがありますよね。それはダイヤモンドが語りかけているのです。ブリリアンスや内部の光の反射、ファイアの煌めき。どのダイヤモンドもそれぞれに個性があり、どのカットもまた異なるストーリーを語ります。その感情の神秘性こそが、私がダイヤモンドに惹かれる理由です。

―幼いころからダイヤモンドは身近な存在でしたか? 将来、ファミリービジネスに携わることに迷いはなかったのでしょうか。

子供のころ、私たちはいつでもファクトリーに来ることを歓迎されました(今でも私たちはオフィスのことをファクトリーと呼んでいます)。ファクトリーを訪れて研磨機の周りで遊んだことは大事な思い出ですし、そういう環境に自然と慣れ親しんでいました。家族団らんの夕食時には、父が王室とのつながりや素晴らしい旅、経験の数々を語ってくれて、その話に驚かされたものです。特に、日本について語っていたのをよく覚えています。
子供は生まれる場所を選べませんから、アッシャー家に生まれた運命をとても幸運に思っています。私たちの家族は第二次世界大戦中に多くの人を失いましたが、それでも恵まれています。祖父母は1945年4月13日に解放され、戦後に父が誕生しました。この奇跡がなければ、私たちも存在しなかったのです。
ダイヤモンド業界に入りたいと考えたのは、ちょうど8歳のときのことです。

最近、父がオフィスにやって来て、ダイヤモンドの研磨工具を描いたとても古い絵をくれました。壁に飾りたくなるような代物では決してなかったんですが、この贈り物の素晴らしさは絵の裏にありました。そこには“父さんからの贈り物、1988年マイク”と、8歳の自分のサインが残されていたんです。

幼少よりダイヤモンドの道に生きることを決意していた“ミスター・ダイヤモンド”ことマイク・アッシャー氏。

―マイクさんはアッシャー家が6代もの長きにわたりビジネスを続けてこられた理由は何だとお考えですか?

ファミリービジネスでは、次の世代のために会社を準備することが何より重要です。家族との仕事には全面的な信頼が生まれますし、どんな事柄についても批判することなく話し合うことができます。良いときはもちろん、厳しい状況にあっても必要に応じて戦略の変更を容易に決断できるのです。焦点は、常に会社を存続させることにありますから。

―高い技術力と伝統を守りながら、時代に合わせた革新性も求められるかと思います。そのバランスをどうとらえていらっしゃいますか?

ダイヤモンド業界において技術は欠かせないものです。原石の加工、カッティングや研磨の精度向上、天然ダイヤモンドとラボで産出されたダイヤモンドの鑑別まで、テクノロジーは業界のあらゆる局面で活用されています。日々、ダイヤモンドの研磨基準を向上させる努力がなされているのです。

しかし、ダイヤモンドは自然の産物です。ファイアとブリリアンスを高めるために、ファセットを0.1度、またはそれ以上調整する必要があるかはテクノロジーではわかりません。人間の目でしか確かめられないのです。

美のためのカッティングは、私たちのDNAのなかにあります。何世代にもわたりダイヤモンドに携わってきた経験が、世界で最も美しいダイヤモンドシェイプを創り出すという情熱につながっているのです。ダイヤモンドがいっそう光輝く、最大限の美を引き出すために、私たちは日々努力をしています。リタと私は、2024年に「ロイヤル・アッシャー」の新しいエメラルド・カットを開発することに決めました。6世代目による、6番目となる国際パテント取得カットとなるはずです。

深い信頼と愛でつながるアッシャー・ファミリー。マイク氏の隣がリタ・アッシャー共同代表、右はエドワード・アッシャー名誉会長。

―5代目であるエドワード現会長からも多くを教わったかと思いますが、ご自身の志に影響を与えた学びとはどんなものでしたでしょうか?

父から学んだ教訓は、この業界だけではなく人生において大切なものです。常に人を大事にし、敬意と誠実さを持って接することを教えてくれました。

―エドワード現会長同様、マイクさんも頻繁に来日し、ビジネスの現場に足を運ばれています。それもまた、コミュニケーションを重視される表れと言えるでしょうか。

日本は過去50年間、最も重要な市場のひとつでした。私の大叔父が1965年に日本を訪れて以降、私たちは小売パートナーや百貨店へと販路を構築しながら、日本市場でのブランド認知度を高めていきました。

株式会社内原がロイヤル・アッシャー・オブ・ジャパンを率いるようになってからは、ともにビジネスを大きく成長させることができました。日本で刻まれた歴史、日本文化への情熱、また私たちが築き上げたビジネス手法は他に類をみないものです。日本のクライアント先を訪問すると、いつも笑顔がこぼれます。ブランドを育てていこうとする情熱あるパートナーたちに会い、ビジネスについて話し合うことができるのは、私たちにとってもありがたく光栄なことです。彼らの多くがそうであるように、私たちもファミリービジネスであり、同じ価値観を共有しています。

アッシャー・ファミリーの一員として、170年の歴史と伝統を守り、次世代へと継承していく責務を担う2人。

―創業170周年を迎え、ファミリービジネスを続けていく重みをどのようにとらえていらっしゃいますか?

一族が経営する企業として、次世代のための会社づくりに焦点を置きたいと考えています。次の世代へと引き継ぎながら、私たちの前の世代もまた誇りに思う業績を築き上げることです。

またこれからも「ロイヤル・アッシャー」の名を世界的なダイヤモンドジュエリーブランドにすることに全力を注いでいきたいと思います。本物の価値と、そのダイヤモンドに秘められたストーリーの数々。最も美しいダイヤモンドを、すべての人に手にしていただけることを願って。

―最後に、マイクさんにとってダイヤモンドとは?

ダイヤモンドはこの世で一番美しいもののひとつです。愛する人へ、永遠の愛の真髄を伝えてくれるもの。すべてのダイヤモンドにそれぞれの物語があり、私はそこに心打たれます。鉱山から産出されたものが、原石を磨く職人の手を経て無限の美しさを持つダイヤモンドとなり、1本のリングとなる。ダイヤモンドは、その愛、愛情、つながり、そして想いを象徴しているのです。

PROFILE
Mike Asscher(マイク・アッシャー)
ロイヤル・アッシャー共同代表/ヤング・ディアマンテール・チャリティ・コミッティ・メンバー/オランダ ヤングプレジデントオーガニゼーション(YPO)プレジデント

米国カリフォルニア州の権威ある米国宝石学会(GIA)の宝石鑑定士であり、「ロイヤル・アッシャー」では“ミスター・ダイヤモンド”の異名を持つ。5代目である父エドワードと叔父ヨープから家業を学び、様々な分野で経験を積んだ。現在はアジアと欧州の新規事業開発を統括。25年におよぶダイヤモンドの経験を活かし、父と共に4種のオリジナルカットを生み出し、国際パテントを取得。21世紀のダイヤモンドの美の表現を追求している。

Text: Aiko Ishii